ワインの賞味期限|未開封と開封済で徹底解説

日本では口にするほとんどの飲食物に賞味期限が記載されています。
しかしワインのラベルにはそのような記載はありません。
テーブルワインは日常用ですから、すぐ飲む方が多いでしょう。
でもお値段や貴重度が増してくる中級から高級ワインになると賞味期限が気になるという方もいるはず。
しかしどの国のどのワインラベルを確認しても、賞味期限の記載はありません。なぜなのでしょうか。
ワインには賞味期限が存在しない
種類にもよりますが、ほとんどのワインはブドウの果実や皮、種などでできています。
だからできたてのワインは酸味や渋みが強く、あまり美味しいとは感じません。
飲みやすくするためには必ず熟成させる工程が必要なのです。
樽やタンクで熟成され美味しくなったワインは瓶詰されますが、成長(熟成)は瓶内に詰められたあとも続きます。
この“成長し続ける”という特性がワインの魅力ですが、保存の仕方、つくり方、ブドウ品種、ブドウの収穫時やテロワール、個人の好みなどによって同じワインでも“飲み頃”は変化します。
つまり賞味期限が設定されていない理由は“飲み頃の感覚は人によって異なる”からなのです。
とはいえ熟成期間が長ければ長いほどいいわけでもありません。
熟成が推奨されているのは主に中級以上のワインですが、中級・高級ワインにはピークがあり、ピークを過ぎたワインは味わいが落ちるといわれているからなのです。
飲み頃の目安はラベルを参照する
ワインボトルのラベルは、いろいろな情報が記載されています。
生産国によって内容は変化しますが、大体以下のようなものです。
・ブドウの収穫年(ヴィンテージ)
・ブドウ品種(フランスのワインにはほとんど記載されていません)
・原産地統制呼称
・生産国(原産国)
・地区名
・瓶詰め元名と住所
・容量
・アルコール度数
どれもが“飲み頃”のヒントにつながる情報ですが、なかでもブドウの当たり年がわかるヴィンテージは大きな目安となります。
また、何種類かのブドウ品種をブレンドしてつくられているアサンブラージュは、ヴィンテージが記載されていないのでご注意を。
未開封ワインの賞味期限について
ワインには賞味期限はありません。
しかし多くのワイン愛好家たちが蓄積してきた経験や知識を土台に、大体の飲み頃というものはわかっています。
テーブルワイン
お手頃価格で売られているワインは、食事のお供に毎日飲んでも大丈夫なようにつくられています。
だから売り場に並べられたら、それが飲むべきタイミング。熟成のことなど考えずに、購入したらすぐに飲みましょう。
季節ものワイン、スパークリングワイン
解禁日が毎年話題にのぼるボジョレーヌーヴォーは、その年の出来を確認するためにつくられているワインです。
そのため熟成して飲むことを想定されていません。
またスパークリングワインも、お店に並んだときに美味しさが発揮できるようにつくられているものが多いので、どちらも1年以内に飲みましょう。
お手頃プライスな中級ワイン
お手頃な価格、あるいは収穫されたブドウが当たり年でないなどのワインは、それほど熟成させる必要はありません。
白ワインは1~2年以内がいいとされていますし、赤ワインなら2~3年以内が飲み頃とされています。
高価格帯の中級ワイン~高級ワイン
熟成するほど美味しくなるといわているワインは、このランクです。
赤ワインは5~10年、コクがある白ワインなら3~5年が目安です。
ただしフランス産のボルドーやブルゴーニュ地方のワインには、それ以上の熟成がよしとされているワインもありますし、世界最高峰といわれている白ワインなら、10年以上熟成させるのが飲み頃とされているものもあります。
開封済ワインの賞味期限について
一度栓を抜いたワインは、空気に触れることで味や香りが変化します。
空気に触れることで味わいや風味を豊かにするワインもあれば、劣化を進めてしまうワインもあります。
楽しめる期間はワインのタイプによって変わるので、飲みきれなかったときは、ラベルや飲んだときの印象で決めましょう。
デイリーワイン
熟成せずに飲むことを想定してつくられています。
しかし熟成度が若いため、思っていたよりも堅いと感じたり、味わいが少ないと思うことも多いはず。
そんなときは敢えて空気に触れさせることで、美味しさが増すこともあります。
抜栓して1日おいてから飲むほうが好みだという方もいます。
スパークリングワイン(シャンパーニュ)
立ちのぼる泡立ちが心地いいスパーリングワインは、抜栓とともに最大の魅力である炭酸が抜けてしまいます。
そのため開けたらその日のうちに飲みきるのが一般的。
瓶内二次発酵方式でつくられているシャンパーニュは、スパーリングワインに比べると炭酸は抜けにくいですが、それでも早めに飲んだほうがいいでしょう。
しかしどうしても飲みきれなかったら、2日以内に飲みましょう。
白ワイン・ロゼ
白ワインやロゼは酸素に弱く、抜栓後は変色してしまうことも……。
しかし1週間以内ならさほど劣化の変化を感じない、甘口タイプもあります。
ラベルにある“甘口・辛口”などの味わいを見て、判断しましょう。
甘口のものは5~7日。辛口の白ワインなら1~2日。辛口でコクのあるタイプほど、酸化が早いと覚えておきましょう。
赤ワイン
赤ワインは白ワインよりも劣化進度が遅く、重厚なタイプであれば空気に触れさせることで味や香りが豊かになるものもあります。
タンニン(渋み)が強いものほど、劣化進度が遅いと考えてください。
酸味を楽しむライトやミディアムタイプの赤ワインなら3~5日以内。濃厚なフルボディタイプなら、1週間以内に飲みましょう。
抜栓後のワインの保ち期間は、保管方法によっても変わります。ワインは光、振動、温度管理、密閉度などで味が変化するからです。
特に気になるのは開封後の飲み残し量。空き容量が多いほど酸素に触れる可能性が高くなります。
保管方法がしっかり確立されていないなら、やはり“栓を抜いたらすぐ飲みきる”が基本です。
飲み頃を過ぎたワインの変化とは
空気に液体が触れることでワインは酸化しますが、前述したようにワインの飲み頃は個人の好みによるので、これが飲み頃、といい切ることができません。
しかし空気に長く触れさせることで
・酸味が強くなる
・風味が弱まったり、雑味が混じる
・雑菌などの微生物が入り込む可能性が増す
・変色する
などが考えられます。
また、保管方法が悪いと開封前のワインも酸化することがあります。
これは温度管理ができずにワインが瓶内で二次発酵してしまうせい。
・ボトルの瓶口がベタベタしている
・噴き出したワインの液体にカビが生えてしまう
などがあります。
ワインを美味しく味わうには、自分の好みを把握し、ピークを予想しながら開封すべき時期を考慮するのがベストです。
ワインは腐らないもの?
ワインはブドウを発酵させてつくられているので、本来は腐りやすいといえます。では、なぜ腐らないのか?
それは、雑菌などが活動しにくい環境をつくっていることと適切な保管方法のおかげです。
酸性度(pH)が高いと雑菌は繁殖しにくくなりますが、多くのワインはpHが2.9~3.9はあります。
またアルコールは殺菌効果があることで知られていますが、ほとんどのワインはアルコール度数が10~15度あります。
しかしワインには糖分など、雑菌のエサになる要素も入っています。
これらの活動を防ぐために二酸化硫黄(SO2)を添加し、雑菌や酸素が入ってこないようにコルクで固く栓をしているのです。
けれどこのコルクのせいでワインが劣化してしまう「ブショネ」や、酸化防止をよしとしない人たちも存在します。
そのため現在では、コルクではなくスクリュータイプの栓を採用しているメーカーや、無添加ワインをつくるメーカーも増えてきています。
まとめ
ワインには賞味期限がないとはいえ、美味しさを最大に楽しむ飲み頃の目安があります。
しかしビギナーなら、複雑なワインの酸味や香り、味わいなど、いつが飲み頃なのかわからないという人も多いでしょう。
それなら知恵や経験が豊富なショップ店員さんに飲み頃を聞いておけば、失敗することも少なくなります。